「基本・着実に全員で前に進むこと」

訓練校名マツダ工業技術短期大学校
訓練課程高度職業訓練 専門課程
訓練科名 機械システム系生産技術科
指導員名梶西 剛
(指導員経験 4ヶ月)
指導担当分野製図、機構学、製品の品質 等

マツダ工業技術短期大学校 機械システム系生産技術科 梶西剛さん

1.訓練校の概要

マツダ工業技術短期大学校は、厚生労働省認定の企業内短大です。

目的は、ものづくり領域の将来の中核として、幅広い技能・技術と豊かな人間性を持ち、世界で活躍できる人材の育成です。

構成は、1学年 40名、2学年 40名です。(2年制、訓練時間:約4000時間)

本校の指導方法は、学科・実習・企画の3本柱を基本に実践力を身に付け、学生の自分発でできるまでやりきる姿勢を促し、何事も前向きに全力で取組ませることです。

教科は、1年次に基礎知識・技能(主に機械加工、板金、溶接、製図、電気)を行い、2年次に応用知識・技能(主にメカトロ、NC、電気、電子制御、シーケンス)を取り組ませます。

その中で、ものづくりの実践力・応用力を身につけ、豊かな人間性の教育を醸成させます。

2.訓練生育成の抱負

私は、12年前に入社後すぐマツダ短大へ入校し、2年間訓練生として学んだ一人です。

修了後、品質部門で自動車部品の量産前後の品質育成や不具合改善業務に携わり、部品を決められた基準の中、品質を作り込むことに取り組みました。実務を通じて、基本のやり方を身に付けることが大事と感じました。品質の良品判定は、寸法、形状、表面などの基準があります。それを基本になる作り込み手順の中で品質を作り込む業務を進めています。品質の作り込みは、お客様からの要望や不具合改善内容を部品の規格や寸法公差に織り込み、上下限で製品をつくり実際に私が測定や外観評価して良品検証します。その結果、要望や改善内容が規格内でも関係者全員がお客様の立場になり、満足できない場合は規格や公差をさらに見直し、同じように検証を繰り返すことで品質を高めます。一台の自動車には多くの部品が使われていますが、新型車の準備ごとに同じ手順で全ての部品の品質を作り込みます。この積み重ねで製品を仕上げていくことでお客様が満足できる品質の製品になります。その繰り返しの中で、基本のやり方が身に付き、主担当として品質の作り込みを推進できるようになったと感じています。

それを踏まえて、訓練生が多くの課題を着実に乗り越える経験を積み重ね、基本を身に付け中核を担う人材に育成していきます。

3. 訓練生を指導する上で日常大切にしている事とその理由

「訓練の中で使う言葉一つをとっても、その意味が分からない」ということが沢山あるのは、私も理解しています。 学生が分からないのは、指導がちゃんと出来ていないと言えると思います。 私は、訓練生の表情を見ながら難しい表情があれば、一つひとつの言葉の内容を丁寧に説明して授業内容を伝えていくようにしています。難しいと思う言葉、例えば授業の中で初めて聞くものや、会社内での専門用語等があれば、説明を加えながらそれを理解させています。丁寧な説明を日々積み重ねていくことで、言葉一つをとっても基本・着実に指導していくようにしています。

4. 私が工夫(改善)した指導法

担当している教科に図学・基礎製図があります。この教科で、図面の書き方や製作に必要な項目を記入することを教えています。ものづくりにおいて図面は、製品を製作するには必要不可欠です。その為、形状を理解していないと正しい図面が作成できない、製作しやすい図面が作成できないことがあります。いきなり頭の中で形状を理解する、と言っても最初は出来ません。私は「百聞は一見にしかず」の考えから、課題ごとに実際の立体を製作しました。立体がどのような形状をしているか、平面にしたときの見え方等は、この現物を見ること実際の見え方の理解を促進させています。

また、私は訓練生が課題達成することができたか確認しないといけません。「百見は一考(行)にしかず」課題は見るだけでなく、自分で考えなければ前に進みません。私は、課題の考え方や手順を何回も見せるだけでなく、まずは実践させます。その中でも理解度が低い課題は、一度私が実践して見せ、全員とそのやり方を考えながら進めています。私の考え方や、伝えたい内容を一緒になって進めることで全ての訓練生が「基本・着実」に課題達成していくように指導しています。

5. 指導員の喜びと苦しさ(難しさ)

訓練生を授業などの達成目標へ育てることに対して、最初は不安しかありませんでした。

それは、今までは担当している部品領域の業務をほぼ単独で遂行することがメインでした。他部門との接点はあっても、職場の後輩の育成に関わることはなかったからです。そして、訓練生を指導する立場になり、最初は授業や企画で接するときに一方的な伝え方になっていました。考えている事や伝えたいことが十分に伝わっておらず、改めて伝え直すこともありました。しかし、授業や企画以外の時間にも私から声をかけて訓練生と交流していくことで相互的にやりとりできる環境になり、今は伝え方も一方的から相互的に変わっていきました。その結果、達成目標へ育てる一歩が踏み出せ、最初にあった不安は無くなりました。

6. 指導員として自己啓発をしていること

本校での指導に関しては、レッスンプランという指導要領があります。そのプラン通りに実施すれば指導する必要なポイントが分かり、指導員には有効なものです。しかしながら、実際プラン通りに進むか事前検証が必要でした。私が指導する立場である以上、その内容の理解度が高くなければなりません。レッスンプランを見て理解するだけでなく、課題を事前に実践して考えながら行動し、学生の前で実践できるレベルになることで指導要領を身に付けています。プランを事前検証して訓練生の立場で分かりにくい点や、自分の理解度が低く伝えにくい点が見つかり、解説を見直し伝えやすい方法にしていきます。見直したプランを用いて授業を進め、理解度が高い指導ができたか確認し、不足があれば同じように検証して充実した指導要領を作成しています。

7. 他校の指導員へのメッセージ

どんな職種においても、基本が大事だと私は思います。基本や基礎が身に付く事で応用や難易度の高い課題にも対応できるようになります。ただ基本を教え込むだけでなく、一歩ずつ着実に結果を積み上げてなければなりません。訓練生が成長したと言える成果が出せる行動をすることで、自らも指導員として成長できる基本・着実な行動にしていきましょう。

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